葦生える土地に回帰していたのでございます
「ああ、ぼくはもう駄目かもしれない…」
少女はゆっくり睫毛を震わせると、そのままばったりと倒れた。彼女の周りには青々とした草原が果てしなく広がり、手には塗装のはがれたコンクリートの欠片を握りしめている。
「ぼくに残されたのは…この小さなおにぎりだけ。…ああ天照坐皇大御神様、死ぬ前にあなた様にお目にかかりとうございま」
「何やってんのよあんた」
ぴしゃりと愛らしく冷たい声でツッコミが入り、彼女はごろんと青空の方を向いた。
「もう片付けは大丈夫だと思ってあんたを放っておいたら、変な虫にびっくりしてお皿割るしあんたはいつの間にかどっか行ってるし、いざ見つけたら死にかけてるし」
「生死というものは人間の永遠のテーマだからね、なんか色々頭の中で哲学書を出し入れしまくってたらああなった」
「それ中にシェイクスピア混ざってる、絶対」
いくらか小柄な少女に起きなさいと肩を叩かれ、彼女は足だけで器用に立ち上がった。
爽やかな風にさらさらと柔らかい髪が踊り、どこからか飛んできた花びらは空に舞い上がる。地平線の彼方まで見えるのは美しい草木。
そして、瓦礫に瓦礫を重ねたようなかつての文明のゴミ跡。